インダクタはどのようにリップルを除去するのか?——電流を安定させる陰の主役

パソコンのパーツといえば、CPUやGPUのような主要コンポーネントに注目が集まりがちです。しかし、これらのパーツが正しく動作するためには、安定した電流供給が不可欠です。その裏で活躍しているのがインダクタ(コイル)。特にVRM(電圧レギュレータモジュール)や電源回路ではリップル除去のために重要な役割を果たしています。今回はその仕組みをわかりやすく解説します。

 

 

1. インダクタとは?

インダクタとは、銅線を巻いたコイル状の受動部品で、電流が流れると磁場を形成します。この磁場が、電流の急激な変化に抵抗する特性を持っています。

言い換えれば、インダクタは電流変化のショックアブソーバーのような存在です。

アルトテキスト(日本語):** リップルを含むスイッチングDC電圧がインダクタを通ることで、滑らかな出力電圧に変換される様子を示す回路図。

2. リップルとは?

リップルとは、直流電圧に重畳された高周波のノイズ成分のことです。特にスイッチング電源では、MOSFETなどが高速でオン・オフを繰り返すため、出力電圧に不安定な「波」が生まれます。

リップルが多いと、次のような問題が起こります:

  • CPUやGPUの誤動作
  • ノイズによる音質・映像の劣化
  • システムの不安定化

 

 

3. インダクタによるリップル除去の仕組み

インダクタは電流の急激な変化を抑える特性を活かして、高周波成分(リップル)をフィルタリングします。

VRM回路における例

  1. スイッチON: MOSFETがオンになり、12V電圧が供給されて急激な電流上昇が発生。
  2. インダクタの反応: インダクタが磁場にエネルギーを蓄積し、電流上昇を緩やかにする。
  3. スイッチOFF: インダクタが磁場エネルギーを放出し、電流を維持する。
  4. 結果: 出力電圧が滑らかになり、リップルが低減される。

このように、インダクタは電流の変動を吸収・調整して、安定した出力を実現します。

4. LCフィルタとの併用

インダクタはコンデンサと組み合わせることでLCローパスフィルタを構成します。これにより、低周波(DC)は通しつつ、高周波ノイズ(リップル)を遮断できます。

  • インダクタ(L): 電流変化を抑制
  • コンデンサ(C): 電圧変動を吸収

 

 

5. インダクタは電気のサスペンション

インダクタを自動車のサスペンションに例えると分かりやすいです。段差で起こる急激な衝撃(リップル)を吸収し、滑らかな走行(電流)を保ちます。

6. 設計時の注意点

  • 飽和電流: 許容を超えるとインダクタが飽和し、効果を失う。
  • インダクタンス値: 高すぎると応答が鈍く、低すぎると効果が薄い。
  • 物理サイズとコスト: 大型インダクタは性能が高いが高価でスペースも必要。

電流容量、サイズ、インダクタンスのバランスが設計のカギです。

 

 

まとめ:見えないけれど不可欠な存在

インダクタは小さな部品ながら、電源の安定性を支える重要なパーツです。特に高性能なCPUやGPUには、微細な電圧変動にも耐えうる精密な電力供給が求められます。

見えにくいけれど、最も頼りになる名脇役——それがインダクタの真の姿なのです。