PWM制御で回転速度を調整する ― Arduinoなしでもできる?

ハードディスクのモーターをESCに接続し、無事に回転させることができたら、次に目指すのは“制御”です。 この第4編では、PWM(パルス幅変調)を用いてモーターの回転速度を調整する方法を、Arduinoを使った方法と使わない方法の両方で紹介します。

NE555タイマーまたはArduinoによるPWM制御回路を示す図で、ESCとハードディスクモーターに接続され、木製ワークベンチ上に部品が整然と配置されたDIY変速グラインダー構成。

ただ回すだけではなく、切削や研磨の内容に応じてスピードを柔軟にコントロールできるようになると、DIYグラインダーは“道具”から“精密機器”へと進化します。

 

 

1. PWMとは何か?なぜ重要なのか?

PWM(Pulse Width Modulation)とは、一定の周期の中でON(高電圧)とOFF(低電圧)を高速で切り替えることで、出力の平均電力を制御する技術です。 「どれくらいの時間ONにするか(=デューティ比)」を変えることで、モーターに与えるパワーをコントロールできます。

例:

  • 100%デューティ → 最大速度
  • 50%デューティ → 中速
  • 0%デューティ → 停止

ESCはこのPWM信号を受け取ってモーターの電流を制御します。これによりGraceのグラインダーは、繊細な研磨から荒い切削まで柔軟に対応できるようになります。

2. ArduinoでPWMを生成する方法

ArduinoはPWM信号を生成するのに最も手軽なツールです。analogWrite()関数を使えば、ほとんどのデジタルピンで490Hzまたは980HzのPWMが出力可能です。

基本的なコード:

int escPin = 9;
void setup() {
  pinMode(escPin, OUTPUT);
}
void loop() {
  analogWrite(escPin, 128); // デューティ比約50%
}

さらに正確な制御をしたい場合は、Servo.hライブラリを使って1000〜2000μsのサーボパルスを生成することで、多くのESCに対応できます。

 

 

3. ArduinoなしでPWMを制御できる?

もちろん可能です。PWM信号は、NE555タイマーICを使ってアナログ回路だけで簡単に作れます。コード不要で回路構成だけで制御できるので、電子工作の入門にも最適です。

必要な部品:

  • NE555 IC
  • 抵抗2本(または1本+可変抵抗器)
  • コンデンサ1〜2個
  • ESCの信号線に繋ぐジャンパー線

可変抵抗を回すことでデューティ比が滑らかに調整でき、モーターの回転速度もスムーズに変化します。 また、抵抗値を切り替えるスイッチを加えれば、3段階スピード切り替え(低・中・高)も実現可能です。

 

 

4. 実際の接続構成例

以下はGraceが実際に構成した接続例です:

  • ESC: SimonK 12V ESC(ドローン用)
  • モーター: ハードディスクの3相BLDCスピンドルモーター
  • PWM制御: ArduinoまたはNE555回路
  • 電源: 12V 2AアダプターまたはSMPS

接続が完了すると、PWMのデューティ比を変えるだけで即座に回転速度が変わります。 作業内容に応じた最適な回転数に調整できるため、切削も研磨も思いのままです。

 

 

5. まとめ:制御できる工具は賢い工具

ただ「回る」だけでは物足りません。「思い通りに制御できる」ことが、プロジェクトを一段上のステージに押し上げます。 GraceのDIYグラインダーは、いまや速度を自由にコントロールできる精密ツールに進化しました。

次回の第5編では、実際にサンドペーパーや研磨ディスクを取り付けて、素材を削ったり磨いたりする実践編に入ります。 このシリーズもいよいよ完結です。