バッテリーマネジメントシステム(BMS)におけるMOSFETの正しい役割を解説

多くの人は、BMS回路におけるMOSFETの動作原理を誤解しています。一般的な誤解として、「充電用FETは充電器のGNDを制御し、放電用FETは負荷側のGNDを制御する」と考えられていますが、実際にはもっと正確で複雑な動作をしています。

 

 

1. NチャネルMOSFETを使ったBMSの基本構成

多くのリチウムイオンBMS基板は、充電と放電を制御するために2つのNチャネルMOSFETを使用しています。接続構成は以下の通りです:

  • ソース (Source): B−(バッテリーの負極)に接続
  • ドレイン (Drain): P−(出力・入力の共通GND)に接続
  • ゲート (Gate): 保護ICによって制御

ゲートにしきい値以上のVgs(ゲート-ソース間電圧)が加えられると、MOSFETは導通し、ドレインからソースに電流が流れます。

 

 

2. 充電用と放電用MOSFETの違い

放電用MOSFETは、負荷放電を許可する場合にP−をB−に接続します。充電用MOSFETは、P+端子からバッテリーパックへの電流の流れを制御します。どちらもNチャネルタイプでありながら、接続方向や配置が異なります。

MOSFETの接続方法と5セルBMSシステムでの役割を示す回路図。ソース、ドレイン、ゲートの接続と充放電制御を分かりやすく図解。

3. 実際のスイッチ制御ロジック

- 放電:負荷側(P−)は放電FETを通じてバッテリーGND(B−)と接続されます。
- 充電:充電FETが導通している場合にのみ、充電器のP+がバッテリー正極と接続されます。

 

 

4. FETが動作していないときの現象

  • ゲート電圧が正しく加えられない場合、FETは開状態(非導通)になります。
  • バッテリーが満充電でも、P+とP−間の電圧が0Vのままになります。

5. 診断のための測定ポイント

  • ゲートとソース間の電圧(Vgs)を測定します。
  • Vgsが低いと、MOSFETは導通しません。
  • これは保護ICが過電流や低電圧などを検知して、FETを遮断している可能性があります。

 

 

結論

MOSFETがBMS回路内でどのように動作しているかを正確に理解することで、バッテリーパックの修理・診断・改造がより効果的になります。MOSFETが単なるスイッチではなく、GND経路を管理しているという視点が、問題分析のアプローチを根本から変えてくれます。