半導体プロセスの進化 ― 7nm・5nm・3nmは何を意味するのか?

スマートフォンやコンピュータの性能向上にともない、7nm、5nm、3nmといったチップに関する用語をよく目にします。しかし、これらの数字が何を表しているのか、そしてなぜ小さくなることが重要なのかをご存じでしょうか?この記事では、プロセス微細化の本当の意味とその重要性、そして最新の技術動向をわかりやすく解説します。

 

 

1. 「nm」とは何か?

nm(ナノメートル)とは、1メートルの10億分の1の単位です。かつて「7nmプロセス」はトランジスタのゲート長を指していましたが、現在では主にマーケティング上の用語となっており、実際の物理的な長さと一致しないことが多くなっています。

つまり、5nmや3nmという表現は論理密度、性能、電力効率の相対的な向上を示す指標になっているのです。

半導体プロセスの進化を視覚化した図解 - 7nm、5nm、3nmのノード、GAAトランジスタ構造、電流の流れ、EUVリソグラフィ技術を含む内容を表示。

2. プロセス微細化が重要な理由

  • トランジスタの集積度が向上:同じ面積により多くの回路を実装可能
  • 電力消費の削減:回路間の距離が短くなり、電力損失が減少
  • 高速動作が可能:スイッチング速度が向上し、発熱も抑制される

プロセスが小さくなるほど、チップの性能と電力効率が向上します。これがムーアの法則が長年続いてきた理由です。

 

 

3. 主な半導体メーカーのプロセス比較

各半導体メーカーは、プロセスノードの定義が異なります。たとえば、サムスンの5nmとTSMCの5nmでは密度や効率が異なり、インテルは「Intel 7」「Intel 4」など独自の名称を使用しています。

メーカープロセス名特徴
TSMCN7、N5、N3iPhoneやAMDチップに採用
サムスン5LPE、3GAPGAA技術を世界初導入
インテルIntel 7、Intel 4旧10nmの再命名

このように、各社はトランジスタ密度・電力効率・歩留まりをもとにプロセスノードを定義しています。

4. FinFETとGAA ― トランジスタ構造の進化

FinFETは3次元構造のトランジスタで、ゲートがチャネルの3面を囲み、より優れた電気的制御を実現します。22nm世代以降で標準的に採用されています。

GAA(Gate-All-Around)はFinFETの改良版で、チャネルをゲートが全方向から包み込むことで漏れ電流の抑制と電流制御が向上します。サムスンは世界初の3nmプロセスでこの技術を採用しました。

 

 

5. EUVリソグラフィと微細化の限界

10nm以下の領域では、従来のDUV(深紫外線)リソグラフィでは限界があり、13.5nmの波長を用いたEUV(極紫外線)リソグラフィが導入されています。より精密なパターン形成が可能になりますが、装置の高コストと歩留まりの課題が伴います。

現在、ASML社のみがEUV装置を製造しており、TSMC・サムスン・インテルなどが導入しています。

6. プロセスとアーキテクチャ ― 性能は二つで決まる

プロセスの微細化は物理的な性能向上を意味しますが、実際の性能はCPU/GPUのアーキテクチャ設計に大きく左右されます。同じ5nmであっても、内部構造の設計により性能や電力効率に差が出ます。

 

 

7. まとめ ― 小さいことは強いこと

プロセスノードの小型化は、単なる数値ではなく電力効率・速度・熱制御といったチップの総合性能を左右する重要要素です。今後も3nm、2nm、ナノシート構造など、さらに微細で高度なプロセス技術の導入が進み、半導体の可能性はますます広がっていくでしょう。半導体の世界では「小さい=強い」が真実です。