ハードディスク分解完全ガイド ― DIYグラインダーのための主要部品を取り出す
第1回では、ハードディスク内蔵のモーターがDIY用の高速回転ツールとして活用できる可能性について説明しました。今回は、実際にハードディスクを分解して、グラインダー制作に必要な部品を安全かつ確実に取り出す方法を紹介します。単なる分解ではなく、“価値ある部品を抽出する工程”です。
IDE(PATA)やSATA接続の古いHDDには、プラッター、アーム、制御基板、強力なネオジム磁石、そして最も重要なスピンドルモーター(BLDC)が内蔵されています。グラインダーとして活用するためには、主にモーター、回転軸、工具を装着するための構造が必要です。
1. 必要な工具
- トルクスドライバー(Torx)セット – T6、T8、T10が主流
- 薄型マイナスドライバーやスパッジャー – ケースの隙間をこじ開けるのに使用
- ピンセットまたはカッター – フレキケーブルなどの取り外しに便利
- ニッパーまたはペンチ – ケーブルの切断や固定部品の取り外しに使用
多くのハードディスクはトルクスネジで固定されています。不適切なドライバーを使うとネジが潰れる恐れがあります。必要な工具がない場合、マイナスドライバーでも代用可能ですが、なるべく正規のサイズを使いましょう。
2. 分解の手順
ネジをすべて外しても、上部のフタが密着して開かない場合があります。その際は、ドライバーを隙間に差し込み、慎重にひねって開けてください。内部には次のような構造があります:
- プラッター – 高精度に研磨された金属またはガラス製の円盤
- アーム+ヘッド – データを読み書きする可動部
- ネオジム磁石 – アームの動作を制御するための強力な磁石
- スピンドルモーター – プラッターを回転させる3相BLDCモーター
グラインダーに必要なのはこの中の「スピンドルモーター」と「回転部(プラッターやシャフト)」です。それ以外の部品は取り外して保管するか、再利用してください。
3. 重要部品の取り出しポイント
① プラッターの取り外し: 中央のネジやリベットで固定されています。これを外せば、プラッターを取り出して、将来的にサンドペーパーやカッターディスクを装着するためのベースとして利用できます。
② モーター端子の確認: HDDの底面にある基板(PCB)を取り外すと、モーターに接続された端子が見えます。通常は3本のA-B-C相の端子と、場合によっては1本のセンタータップ(ESCには不要)が存在します。テスターで抵抗を測って正しい配線を確認しましょう。
③ 磁石の取り外し: ネオジム磁石は非常に強力です。手を挟まないように注意しながら取り外してください。取り外した磁石は工具ホルダーや冷蔵庫マグネットとして再利用できます。
4. DIYグラインダーに必要な部品
- スピンドルモーター – 回転運動の中心となる部品
- プラッターまたは回転軸 – 研磨ディスクなどを取り付ける基台
- モーターの端子部 – ESCとの接続用(三相出力)
- HDDの下部ケース – ベースや固定台として再利用可能
アームやヘッドはこのプロジェクトには不要です。見た目を活かしたクラフト用途以外では取り外して問題ありません。基板(PCB)も使用しない場合は取り外して保管するだけでOKです。
5. まとめ:分解こそが製作の第一歩
HDDの分解作業は、DIYグラインダー制作のスタート地点です。中の構造を実際に目で見て、モーターを取り出す作業は、とても達成感があります。
次回の第3回では、取り出したBLDCモーターをESCに接続し、初めて回転させる工程を詳しく解説します。GraceのDIYグラインダー計画、いよいよ駆動フェーズに入ります。
